エルキア先王はなぜ愚王と呼ばれるのか。またどうすれば打開できたのか。ターニングポイント。

 私が掲げるエルキア先王のミス
1,一般的な理由。敗北が嵩む常敗の国でありながら、六位達の魔法大国エルブンガルドに四勝した東部連合に無謀な挑戦を続けたから

2,東部連合に、大陸の16分の8を、王城という心臓部を含む形で、手渡してしまったから。大陸の覇権を14位に取られた形になったから

3,私が一番注目するミス。
 東部連合に短期間のうちに大量の国土を与えた。手渡したそれらの土地は14位の手によって、そのどれもが素晴らしい価値を産み出す土地へと開発された。
大戦以来ずっと大陸を持っていたのに何ら発展をさせず、開拓に着手した他の種族によってその旨味を引き出されてしまった。それはめちゃくちゃ惜しい。国民に指導者が恨まれそうなことだ。
遅くても五回戦目が負けた後、理想を言えば二回戦目に負けた後に14位達が技術をもって開発に成功、大量の利益に喜んでいるのを見て、「ワービーストにこの大陸の旨味を吸わせているのは勿体ない。このまま土地を失うよりも、残りの土地で是非私たちもやってみよう」とゲームから一旦手を引くべきだった。その上で、ワービースト程の身体能力と技術に恵まれずとも、ワービースト以上の時間と手間をかけて土地開発事業を行って、その上で、ゲームをするか決めるべきだった。16分の2から5位つまり三分の一以下であれば大陸の覇権は揺らがなかった。あとは工業国化した東部連合に対抗した国土開発によって得た貿易品を、物量に任せて東部連合に輸出し、同じ大陸のなかでの経済的イニシアチブを握り続ければワービーストの人材も雇用出来るようになれた。

4,八回負ける間、一回戦目以降も「東部連合の港湾都市一つ」の賭け金のまま自らの土地をリスクにさらし続けた。なぜ二回目以降に「これまでエルキアが取られた土地のいくつかの返却、または貸与による共同管理」を申し込まなかったのか。

5,仮に東部連合の港湾都市がどうしても欲しいのであれば、なぜ「都市一つを、大陸国土を二つ以上と交換」という交渉を持ちかけなかったのか。あいこ、つまり両者同時棄権よる両方の勝利時報酬の支払いあいという形に持っていけなかったのか。先王はいちいち土地を一つずつ賭け続けたから八回やって取り分何もなしという戦績を残してしまった。

6,なぜ三回戦目くらいが終わった辺りで他の大国に軍事同盟を持ちかけなかったのか。エルキアが国土を渡し続けたために、魔法を使えない工業国家が世界第三位にまで登り詰めてしまった。このまま大陸全土を手中に納められた上で開発されれば、そう遠くない未来にワービーストが世界一の国家の主になってしまう。序列自体は子供っぽいこだわりだとしても、昔からの伝統ある国家経営モデルを続けにくくなる国が出てくる。魔法以外の技術の見直し、貿易上の通貨競争力の理由や、内部からの工業化欲求の発生が原因となるだろう。そういう未来絵図をプレゼンテーションして東部連合に国土を渡さない出くれると嬉しいだろう大国に、ゲームを控える代わりに、ワービーストが開発させた国土にみあうだけの手当てをもらえばよかった。攻撃的にいくなら、ワービーストの開発した部分をそのまま手放させる形で、ワービーストを大陸から追い払う策に協力してもらえばよかった。

7,国民が口にする「愚王→フーリッシュキング」という言葉を、右から左に聞いて「シュリーフキング」→「シェリフの王、保安官シェリフスター」と解釈していたから。それだけでは王としてではなく個人として狂人なだけだが、自らが治安担当者として正義を担っていると自負したせいで、威信と正義と理念のために戦いをやめられなくなった。軍隊と警察は違う。警察は国内治安維持のために何度負けても取り締まりにのぞまなくてはいけないが。軍隊はシビリアンコントロールによって、敗北した結果を受け止めたうえで方針を確認し続けなくてはいけない。もし警察が頼りにならないならば、人々は警備会社に頼り始め、さらには政府機能の実質的民営化がされるようになるのでないか。公務員の収入が減った末路は、へヴィーオブジェクト三巻に描かれる、右翼化か、企業の傘下になるかもしれない。公務員は三度の食事の質も怪しくなるかも。四巻で描かれているように、大量の資金を得た警備会社のPMC業務開始もあるかもしれない。

8,人を見る目がなかったこと。大戦時に書籍略奪の経歴があるジブリールに、図書館を賭けた上で「仲間になれ」と持ちかけてきた。他国の兵器を駐屯させるようなものだから、王都を交戦国に更地にされるような事態は避けられるかもしれないが。宗教上の守護者ガーディアンとして考えるには、あまりに恐いものが無さすぎる。

9,エルキア先王は記憶が残っていたんだから、集団の長としてではなく、個人として対戦相手の初瀬いのに挑み続けるべきだった。個人としてであればジブリールのように龍に「勝てるようになるまで続ける」姿勢でも、王として国に損失を出さない。対戦相手のいのが、国家の代表としてストイックかつ冷静な計算を貫ける人物であれば、国家の代表として個人資産で負えない対価を支払うまで応じてもらえない。ただし、二巻の対応を見ていればわかるように、感情が昂ると取り繕った態度が剥がれて、広島弁のヤクザみたいな応酬を仕掛けてくる。歳をとっても丁寧かつ老獪な性格にはならなかったように見える。若いときはどれだけ血気盛んだったか伺い知れる。
 若いときの初瀬いの相手であれば、挑発をたっぷり続ければ記憶を奪う国家としての機密保持を捨てても、面子のために応戦してくれることだろう。負けた後に指をつめろとか言われそうだが。年を取ってからも「若い頃はもっと熱いー」と懐かしんでいるのだから、暑くなれる展開、熱くなる相手を用意すればいける。レトロブーム。引退してからであれば、いのが個人戦で敗北しても問題ないだろうから、エルキアの悔しがっている連中は雪辱戦をするチャンスだ。ローコストで応じてくれそう。
 いのの周囲を巻き込むつもりがあるなら、とある魔術の禁書目録シリーズのアクセラレーターが仕事以外でどういうときに戦っているかを考えてみれば良いのだ。

基礎的なところで
10,遺書にアレクサンダー同様「最強」に、と書くのであれば、まず生前の段階で最強のギャンブラーを呼び寄せて東部連合と戦ってもらうべきだった。むしろ、次の最強は、と書かない辺りで、自分が人類最強でない自覚があったのだから対国家戦はやはり自粛すべきだった。

11,オーシャンドの女王のゲームに似た状況であるが、ゲーム内容を告げる遺言が早い段階で隠滅、偽造される可能性を考えなかった。遺言を受け取った遺族や立会人が口をつぐむ可能性は結構あった。「余の血縁でなく」何て一文は親類縁者に圧力をかけられない方がおかしい。他国の圧力が先王の段階からあったと考えれば「人類最強」という条件は弄られる可能性が高かった。他国にしろ自分たちの息がかかった候補者の擁立レースを展開する準備があっただろうし。
しっかり国中で国盗りギャンブルされたということは、誠実もとい馬鹿正直な面子が揃っているってことだろうか。人類種全体で、空並に疑うやつが足りないということでもある。プラムみたいなやつが身内から出ていたら危なかったわけだから。

12,人類最強が誰になるかわからない以上、少なくとも人類最強が一定水準以上になるように手配をするべきだった。あるいは死んだふりをした本人が仮装して最後の挑戦者だ、と繰り出す展開でもいい。あるいは圧力をかける他国の中で、ステフとの婚姻をだしに動かせる、他国のギャンブラーに新国王選出後すぐに挑発させてもよかった。一応手近で最強な噛ませ犬くらいは影を出しておくべき。

13,運が悪い。あるいは五巻におけるクラミーのようなやつに、「自分に協力しろ」ということで東部連合戦をしていたのかもしれない。アル中でなく、耄碌している年齢に脅されたのかもしれない。

14,二巻の人類種のデモのように、東部連合への常敗を止めよう、という動きはあったはず。マグナカルタのような要求だったかもしれないし戦争の実権に関わる要求だったかもしれない。それをことごとく退けてゲームしたこと。

15,常敗の人間であっても、データがあまり詳しく入っていない十四種とのゲームばかり行っているのはおかしい。むしろ弱いゲーマーならば、少しでも自分が勝てそうなゲームを探して目移りしながら様々な相手に挑むはずではないか。素人がカジノでカードばかりやっているようなもの。さらに言えば、魔法が使えないならばハンデをもらった上で、同じカードゲームが普及しているエルブンガルドに挑むものではないか。トランプとトレーディングカードゲームの違いはあるが、勘のようなものはテレビゲームより近いだろう。

16,心を読む能力、を警戒しすぎた。読まれてはいけない記憶を自ら封じた上で、寝ながら戦おうとしたのでないか。ドラえもんのサトリヘルメットの章に、気絶した睡眠者を他人がリモートコントロールした上でエスパーに挑む落ちがある。召喚術をエルフが得意としているのだから、エルブンガルドが四回挑んだ際にその手段が使われて、なお負けたのかなと想像してみる。
結局近い展開として、ステフを白が誘導していづなに勝利したわけだが。




17,バカというより奇妙な点。年を取ったら経験と知恵で勝負するだろう普通。東部連合とのゲームに勝って初めて本人以外にわかることだが
先王は東部連合とのゲームに際し記憶を奪われていない。しかし、先王は孫のいる人類種の高齢者だったんだ。エルフのフィールの自称年齢よりも上。そんな人間が、頭よりも体を使うゲームで連敗したがるのはおかしい。いののように筋骨粒々なワービーストならともかく、人類種の先王はよぼよぼで熱い勝負になるわけないんだ。どんなに愚断の人であろうと、常識人の年寄りならば、頭を使うゲームで勝負する種族を選んで、仕掛ける筈。高齢者で勝てるケースなんて、時代劇の水戸黄門か老剣客くらい。「東部連合のこうわんとしを→東部連合の水戸黄門(の首)ひとつ」何て意味でなければあの歳になってから東部連合と戦うはずがない。敵役では柳沢吉保が有名か。
ここについて先王をバカだというなら、なぜもっと若い体力のあるうちに肉体戦を挑まなかったのかということ。年をとる前に軍人として名を馳せようとするはずだろう。少なくとも、「自分から挑んで、」負け続けるのはおかしい。ドン・キホーテと同じくなにかの物語に触発されたのだろうか。
いのもいづなをよく育てているが、年を取ってからは自分の夢を次ぐものを育てようとするものではないだろうか。
それとも老いては子に従え、ということで自分の子孫が愚策ばかり打って、それに付き合っていただけなのか?
先王は水戸黄門を本当に目指していたのかなあ。だったら250年がかりの大日本史のような歴史書編纂に挑みそうなものだけど。

18,実は人類の世界全体で時間が巻き戻されていて、21世紀からは3500年くらい前のユダヤの王国に近い世界となっていた。そんななかタイムスリップを成し遂げた先王は「ハッカー」と呼ばせていて、それが訛ってバカとよばれるようになった。

19,暗黒星のような反転世界になっていて、史上最高の賢王と呼ばれるべき人物が、愚王と呼ばれるようになった。